1991●黄山
 


黄山でのことです。
この山の山頂は、朝は晴れているものの午後から霧が立ちこめてきて、夕方には景色は何も見えなくなってしまいます。ねっとりした、まるで雲の中をさまよっているような、すごく不快な霧です。上の写 真は午後、霧に覆い隠されてゆくホテルを写したものです。時間と共に霧はホテルを包み込み、まもなく何も見えなくなってしまいました。

黄山には当時2つホテルがありました。僕はそのうち有名なほうに泊まろうと予定していました。石造りのなかなか立派な建物で、そこならリラックスして疲れを取ることが出来ると思ったからです。山は混んでいたので山頂に着くとすぐにそのホテルに向かいます。ところが門のところで守衛に止められ、「レセプションはあっちだ」と言われてしまいした。
言われたほうに行ってみると、みすぼらしいプレハブが建っていて、そこにレセプションがありました。部屋は50元だと言います。いやに安いので不思議に思いましたが、お金を払い、部屋の番号をもらいます。そしてもう一度ホテルの玄関に向かうと、また守衛に止められてしまいます。「おまえの部屋はここじゃない、あつちだ」といいます。彼が指さしたのは例のみすぼらしいプレハブでした。

外国人を徹底的に区別するこの国で、まさかこのプレハブに外人を泊めるとは夢にも思っていませんでした。部屋を換えてもらおうとレセプションに戻ると、ある中国人が服務員に文句を言っていました。「ぼくは一人部屋が欲しいんだ、変えてくれ」。すると服務員は「ここには一人部屋はなく、全部二人用だ」と言うのです。「さっきの男は一人で一部屋もらっていたじゃないか」と男。どうやら僕のことらしい。「あの人は外人さんだから仕方ないんだ、今日は混んでいるから一部屋二人だ」。なるほど、僕は外人だから一人で部屋を使わせてくれるのか、それは有り難く思わないとな。そんなやり取りを聞いてしまったので、僕はあきらめて部屋に入りました。

部屋にはベッドが一つあり、後は30cm位のすき間があるだけです。このベッドに二人寝るのがここでのルールの様です。鬼です。
夜になり布団に入ります。外は霧です。いや、この立て付けの悪いプレハブに外も中もあるはずありません。外の霧は当然中にも進入してきます。そう思うと一度はかぶった布団を足元に丸めて、ちぢこまって眠りにつきました。飯も食っていないのでなかなか眠れません。8月なのに寒くて凍えますが、とてもこのジメジメと湿気を吸い込んだ布団を被る気分にはなれませんでした。

翌朝下山します。すると、重たい荷物を担いで人が次々と山を登って来ます。ロープウエーもあるのですが、人力で運びあげたほうがコストが安いようです。手前のおじさんの荷物を見て下さい。赤く見えるのはコーラの缶 です。50本はゆうにあるので350ml×50=17.5kgになります。コーラだけでです。「こんなに苦労して運び上げて来た物を粗末にしてはいけないなあ」と思いましたが、昼飯に食ったチャーハンは、あまりの不味さにきれいさっぱり捨てました。でも一応は申し訳ない気持ちがあったので、写 真に収めておきました。