カンボジア旅行記 その3・アンコールワット(シエムリアップ)
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日の出と共に離陸する飛行機。


グランドホテル。シエムリアップ随一の高級ホテル。町の一等地・王様の別荘の前にそびえる。


シエムリアップの町の様子。町の真ん中に川が流れている。


チェンラーゲストハウスのシングル。ファン・水シャワー・トイレットペーパー・タオル付き。6$。


チェンラーゲストハウス。ファン・水シャワー・トイレットペーパー・タオル・イヌ2匹・ネコ付き。


アンコールワットにて。12月31日にはミレニアムを祝うイベントが繰り広げられていて、それは凄い賑わいだったそうだ。その名残と思われるシャンパンの瓶。


アンコールトムにあるバイヨンの遺跡。顔のレリーフが面白い。


プラサット・クラヴァンにて。子供の物売りに囲まれた外人さん。


サンセットを見に行ったアンコールワットにいた坊さん。仏像のような端正な顔立ちです。


アンコールワットのサンセットは夕日よりも夕日に照らされた寺院の方が美しい。


バンテアイ・スレイの遺跡。


プリア・カンのイヌ。


東メボンのゾウ。


プノン・バケンの夕日。


夕日を見ていた坊さん。


いわゆるピックアップトラック。これに乗ってプノンペンまで行く人もいるが、僕はパスした。


シェムリアップ-プノンペンを走るスピードボート。23$。乗り場まで送ってくれる。季節によって船着き場が違うので、自力で港まで行くのは不可能だろう。


約5時間の道のりは、川で暮らす人々を見ることが出来て楽しい。写真はコンポンチュナンの町。

アンコールワットは万里の長城と1、2を争うアジアの超有名遺跡です(根拠を示せと言われると困るけど、そんな気がする)。まだ、治安が回復したばかりで、危険というイメージがあるため観光客の数はそこそこですが、数年後には行列ができる観光地になっちゃうかもしれません。早めに行きましょう。

プノンペンを6時10分発というひどい飛行機に乗ってしまいました。飛行機はちゃんとしたジェット機で、酷くないですが、時間が酷いです。しかも、ロイアル・エアー・カンボジアのオフィスでチケットを買ったら片道66$しました。ガイドブックには55$と書いてあります。多分、旅行代理店で買えば55$だったんでしょう。損した。この6時10分の飛行機に乗るには、5時にホテルを出なくてはなりません。この時間では町は真っ暗です。タクシーなんか拾えるのかしら?心配で心配で夜も眠れませんでした。そんな事なら前日予約しとけばいいのですが、それならそれで、ちゃんと来てくれるか心配で眠れないでしょう。

幸いなことに、5時にホテルを出るとちゃんとバイクタクシーがスタンバイしていて、それに乗ることができました。相手が英語NGだったので値段交渉するとき、5000R札を出して「これでどう?」と聞いたつもりが間違えて10000R札を出してしまいました。運転手は宝くじにでも当たったような嬉しそうな顔で首を縦に振りました。早起きは三文の得という言葉はこの運ちゃんのためにある言葉です。僕としては、足が確保できたことが嬉しかったので、10000R(3$弱)は大した問題ではないです。

早い時間の飛行機なので、当然到着も早く、7時にはシエムリアップの空港に着いていました。早すぎてタクシーは来てませんでした。しばらく待つと一台やってきたのでホテルまで乗りました。1$と言われて、ディスカウントの交渉をするファイトがなかったので言い値で乗りました。この運ちゃんも早起きは三文の得です。損ばかりしている俺も一応早起きしたんですけど。運転手は「トゥデイ・ゴーイング・アンコ−ルワット?」と聞いてきます。こうやって自動的にアンコールワット周遊ツアーの段取りが決められて行きます。

ホテルはチェンラーゲストハウスに決めてました。むちゃくちゃ有名ですし、ほめている人も多い宿です。連泊するので失敗のなさそうな所にしました。新しい穴場を探すファイトがなかったです。ところが日本人に人気のチェンラーGHやタケオGHのある町の北側はちょっと不便です。マーケットのある町の南側に行けば、レストランやインターネットカフェ(高い)、貸し自転車屋、旅行代理店、安い食堂などが建ち並び大変に便利です。もちろん宿も沢山あります。例え北の方に泊まっていても、早いうちに南の市場周辺を探索されることをお薦めします。僕も途中で南に引っ越したかったのですが、面倒なので止めました。

シェムリアップの宿の値段は結構イイカゲンなようです。私が泊まった部屋は6$でしたが、隣の部屋は広いのに5$でした。あほらしくなります。シャワー付きの部屋で2$というホテルに泊まっている人にも逢いました。クリスマスから正月のピーク以外ならダンピングも有りだと思います。バイクタクシーの運ちゃんと相談して連れてきてもらうのが一番いい方法かもしれません。

ホテルが決まり、バイクタクシーも決まり、時計を見るとまだ7時半です。さすがに疲れていたので今日は午後から回ることにして、午前はシエムリアップの町を散歩して、昼寝をしてからアンコールワット巡りをする事にしました。午後、待ち合わせの時間に行ってみると、運ちゃんはいなくて、代わりの人が待ってました。「マイ・ブラザー・ビジー」なのだそうです。こういうことが頻繁に起こるのかどうか知りませんが、この翌日、さらに運転手が変更し、新たな「マイ・ブラザー」が登場しました。4日の間に3人も交代したのは珍しいでしょう。決して客の僕がむちゃくちゃで、運ちゃんが嫌がったという事ではないです。きっと運ちゃんの組合みたいなのがあって、客を回しているのでしょう。


一日目の午後、最初に行った場所はやはりアンコールワットです。午後2時から5時まで、3時間は一回りするのに丁度よい時間でした。どんな所だったかは写真を見てください。ミレニアムイベントの残骸が残っていて、景観の邪魔をしていましたが、さすがは世に聞こえたアンコールワット、期待は裏切りません。

アンコールワットを5時に出て運ちゃんに「Hill」に行ってくれと言います。Hillは丘ですが、これで通じます。正式にはプノン・バケンといいます。アンコールワットの近くにある丘で、この上からのサンセットを見に行くのです。サンセットを見る場所はここかアンコールワットが定番で、周辺にいる観光客はこの二カ所に集まってきます。観光客が集まってくるということは、それに付随して色んな有象無象も集まってきます。ちなみにアンコールワットの前には係員がいて、怪しい人は通れないように見張っていますが、「Hill」には係員はいないので、誰でも集まってきます。

「Hill」ですので、上りは坂道です。昔は階段があったのかもしれませんが、今はタダの坂で、急です。息を切らして登ります。でもタダでは登らしてくれません。「Hill」の下には土産物屋が密集して、通せんぼしています。よそ見をしないように首を真っ直ぐにして人の群を通り抜けます。「Hill」を登る坂の途中には土産物屋はいませんが、もっと厄介な人が並んでいます。乞食です。いや、乞食と言ってしまうと語弊があるかもしれません。傷痍軍人と言えば良いのでしょうか。軍人ではない人もいるでしょうからそれも正しくないでしょう。兎に角、地雷で足や腕を失った人が急勾配の坂道にズラリと並んで手を差し出しているのです。

その坂はとても急で、滑りやすくて、しかも体力を使うので登っている人はとても疲れています。そんな疲れた旅人が、財布を取り出して、お金を与える余裕などあるはずがありません。それどころか、足を失いながらもこの坂を上って来ている彼らを羨ましくさえ思っています。それに加えて、乞食が多すぎます。5mに一人いますから、全員にあげていたら頂上にたどり着くまでに全財産を無くしてしまう上に日も暮れてしまいます。だから、乞食さんも全然儲かっていないようで、しょんぼりした様子が余計に哀れを誘います。

やっと頂上に到着しても静寂の中でサンセット見物というわけには行きません。ここにも大量の土産物屋がいます。サンセットまでまだ時間があるから、基本的にはヒマですし、何より沢山のガイジンが集まっています。土産物屋にとっては稼ぎ時です。しかしガイジンさんも馬鹿ではないので、こんな所で土産を買おうとはハナから思っていません。土産ならちゃんとした店で買った方が安心だし、ここに来るまでに十分に土産物屋の洗礼をくぐり抜けて来ています。

で、土産物屋が取る戦法は、泣き落とし作戦&子供戦法です。まだ、年端もゆかぬ子供がわけのわからん土産物を持って売りに来ます。4カ国語くらい使います。

「きれいなお姉さん、これ3個1ドル。とても安い。」
「かっこいいお兄さん、これ3個1ドル。とても安い。」

40過ぎたような「日本人のきれいなお姉さん」は10歳を過ぎたかどうか、という女の子にさっきから20分くらいつきまとわれています。基本的に子供たちは大人と違い、楽しんでいます。買ってもらえなくても悲壮感はなく、40過ぎの「きれいなお姉さん」が、「いらないのよ。まあ、どうしましょう。いらないんだけど…」とオタオタしているのを見て笑っています。僕も笑いながら見ていました。僕のすぐ隣にいたバックパッカー風の二人組の所にも「かっこわるいお兄さん、これ3個1ドル。とても安い。」と子供が近づいてきました。その向こうのデブの外人さんの後ろには団扇を売っている子供がつきまとっていて、びっしょり汗をかいた外人さんの背中を扇ぎ続けています。やっぱり本気で売る気には見えません。僕の所には誰も寄って来なかったので少しホッとしながらも何か寂しい夕暮れでした。

この丘からはアンコールワットが見渡せ、西バライの池やシエムリアップの町もかすかに見ることが出来ます。山頂にあるパゴダの屋根にはTいかにもUなバックパッカーが登って夕日を眺めています。太陽の沈む方向は紅色です。その反対の方向は藍色です。どちらの方向も捨てがたく、うろうろ歩き回りながらサンセットを迎えます。その瞬間に拍手が起こります。ここで、大失敗をしてしまいました。フィルムを巻き戻すのを忘れてカメラを開けてしまいました。あんなに沢山撮ったサンセットのフィルムはパーになってしまいました。おかげで、翌日以降、狂ったようにサンセットを撮りまくるはめに陥ってしまったのでした。


翌日以降、バイクタクシーの運ちゃんに従って遺跡見物が続きます。いちいち細かいことは書きません。どの遺跡に行っても、子供たちは元気で、「お兄さんフィルム安い。」「お兄さんTシャツ!」と声を掛けてきます。大人にも声を掛けられますが、大人ではインパクトがありません。平気で無視出来ます。でも、子供だと何となく無視できず、「ごめんねー、いらないよー」とか言わずにいられません。でも子供らは飽きっぽいようで、売り歩くのに飽きたらもう別の遊びを始めたりして、親もあきらめ顔です。たちが悪いのは、勝手についてきて、勝手にガイドしてくれて、しかも最後に銭をねだるガキどもで、こいつらは小学校も高学年くらいの、ちょっとませた男の子です。味をしめてしまっていて結構しつこいです。

タ・プロームという遺跡はかなり朽ち果てていて、大きな樹は遺跡の上に根を張り、今にもジャングルに飲み込まれそうな所です。非常に面白い所です。歩いていると、お巡りさんがいて、「そっちは危険だよ、屋根が落ちるかもしれない」と言って道を教えてくれました。親切なお巡りさんだと思いましたが、大間違いでした。こいつは、もっぱら小学生のガキがやっているガイド業を、大人にもなって、しかもおまわりのくせにやっているのでした。いつのまにかおまわりの言うがままに遺跡を観光し、出口の所で、「クレクレ、ゼニクレ」と物欲しそうな顔をされました。やられました。気をつけていたのに、まさかおまわりがこんなセコイ手を使うとは思いませんでした。しかも1000Rをあげると、「2000Rくれ」と言われてしまいました。セコイです。アホらしかったので、ちょっと怖かったけど、怒った顔をして「1000R or ZERO」と言うとおまわりは退散しました。むちゃくちゃ悔しかったです。

2日目の夜はアンコールワットでサンセットを見ました。さすがにここにはうるさい物売りや、しつこい乞食はほとんどいません。てっぺんに登って日暮れを待ちましたが夕日はジャングルの中に暮れるのであまりきれいではありません。ちょっとがっかりしてワットを下りて、ふとふる向くと、アンコールワットが夕日の藍色に包まれてそれは幻想的でした。アンコールで夕日を見るなら頂上に登るより入り口付近でワットを眺めた方がいいかもしれません。


第3日目はシエムリアップの町から40kmの所にあるバンテアイ・スレイに行きます。数年前までは危険で立ち入れなかった所ですが、今では誰もがここまで足を運びます。片道1時間。そのうち30分は悪路です。凸凹はそれほどではないのですが、砂埃が舞うので、マスクと眼鏡が必須です。なるべく朝早く出発するか、人が少ない時間を見計らって行きましょう。自動車やトラックが近くを通ると、体中を埃が包み、まるでガソリンスタンドの自動洗車機の中(水の代わりに埃が出るようになった特別仕様)にいるみたいです。学校の先生が授業にやってきて、教室のドアーを開けたら、黒板消しが300個はさんであって、全部一度に頭の上に落ちてきたくらいの凄い埃です。ここに行くときは、前もってどこかのお寺で「どうか、トラックとすれ違いませんように」と念入りにお参りしておきましょう。

肝心のバンテアイ・スレイですが、さすがに埃にまみれてもみんな来るだけあって、来る価値はあります。他の遺跡が石造りで、黒色の外観なのに対して、ここは砂を多く含んだ茶色の石で出来ています。それだけ材質はもろいはずなのに、石に彫られた装飾が不思議とよく保存されています。遺跡自体は小さいものなので1時間あれば見物は終わってしまいます。後はまたあの道を戻るだけです。帰りの道すがらは、シャワーのことしか頭にありませんでした。


アンコールワット巡りは、基本的にはバイクタクシーをチャーターして行います。一日6$と、その料金もほぼ固定されています。ルートも大体決まっていて、バイクの運転手が勝手に連れていってくれます。ルートは大体以下の通りです。
●町の散策で半日。
●アンコールワットで半日。
●アンコールトム(バイヨンと王宮)で半日。
●内側のサークル(プラサット・クラヴァン、バンテアイ・クティ、タ・プローム、タ・ケウ、トマノン等)で半日。
●バンテアイ・スレイで半日(エキストラチャージがかかります)。
●外側のサークル(プリア・カン、ニャック・ポアン、タ・ソム、東メボン、プレ・ループ)で半日。
これだけ回ると大体3泊4日が消費されます。時間が余ればロリュオスや西バライへ行くことになります。私は上記のルートを丸3日で回って、慌ただしくもなく、ヒマでもなく、過不足ない丁度いい日程でした。忙しい方は一日で1.5日分のルートを回れば2泊3日で回れますし、なにも全部回る必要はないと思います。逆に遺跡や美術に興味のある方はじっくり回れば一週間くらいすぐ経ってしまうでしょう。

このように日程がパターン化されていることは一面わかりやすくて合理的ですが、反面、パックツアーみたいで画一的です。一番気になったのが、常にバイクタクシーの運ちゃんが待っていることで、自分のペースが守れません。
「あんまりゆっくりしていると昼飯を食いに町に帰る時間が無くなってしまうなあ、そうなると、どこかで運ちゃんにメシを食わせてやらなきゃならんなあ。」とか、「今日中にこのルートの遺跡を回っておかないと、明日の予定が狂ってしまう。」とか、「たまには運ちゃんにジュースでも買ってやらないかんかなあ。」とか、気を使い始めるとうっとおしくなります。一応一日6$払えば朝から晩まで運ちゃんを奴隷のように使ってもOKなことになっています。しかし、結局毎日昼休みは11時から2時まできっちり取り、運ちゃんの計画通りに遺跡を巡り、ジュースは一本も買ってやらず、日程を消化しました。若干心残りは残っています。今度行くなら絶対チャリンコで回りたいですね。そうすれば誰にも気兼ねなく一日好き勝手できますから。


最後の日、また「Hill」に登って夕日を見ました。結局一回も朝日を見ることはありませんでしたが、夕日だけはきっちり見ました。そして一日目に写真を失敗してしまったので、特に念入りに写真を撮りました。おかげで、フィルムが無くなってしまい、シエムリアップの町で補充する事にもなりました。大変ありがたいことにフィルムは何でも売っています。僕の愛用のフジのVELVIAもあり、36枚撮りで6$でした。えらい安いです。賞味期限はギリギリのものしかなく、何となく発色が悪いような気もしますが、3本買ってもまだ足りず、日本に帰って現像代で痛い目にあいました。全部で450枚も撮ってしまったのは今までの新記録でした。

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